個別指導塾の学習空間、千葉北総エリア西白井教室・鎌ヶ谷教室担当の大野です!
文学作品に興味がない人にも、本を読む習慣すらない人にも、一度は訪れる読書の夏。
読書感想文。
夏休みの宿題にある生徒さんも多いのではないでしょうか。
そんな読書への道を「漢字」の観点からひらいてみましょう!
小川未明『夏とおじいさん』の一節を題材に、
今回は、小学生で習う漢字(教育漢字)を中心に深掘っていきましょう!
『ある街に、気難しいおじいさんが住んで居ました。全く、独りぽっちで居りましたけれど、欲深なものですから、金をためること許り考えていて、さびしいということ等知りませんでした。』
(出典:青空文庫https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/52580_65459.html)
上の文章は、ひらがなをあえて漢字に書き換えたり、もともとの漢字表記を別の漢字に変えたり、あえて何も変えなかったりしています。
解説していきましょう!
・「独りぽっち」…分厚い国語辞典といえば!でおなじみの『広辞苑』によると、ひとり「ぼ」っちで引くと「独り法師」という表記が見られました。漢字表記をせっかく見つけたので直してみても良かったのですが、「ぽっち」という音の響きを残しておきたいので、ひらがな表記のままにしました。
・「もの」…日本語では助動詞的に使われるとされる「ものだ」の一部と考えました。もう少し解説すると、物理的な「もの(物)」や人物を表す「もの(者)」といった意味には、私は解釈しなかったということです。『明鏡国語辞典』には、こうした助動詞的な使われ方を、「一般的にかな書き」としているので、ひらがな表記としました。
・「こと」…形式的であまり意味を持たないこの使われ方は、やはり『明鏡国語辞典』には、「一般的にかな書き」とされていたので、ひらがな表記としました。
・「許り(ばか-り)」…今回の文脈では、~だけ、といった限定を意味する「ばかり」ととらえました。国語辞典の見出し語だけをみると、「許り」の表記しか見られません。ただ、『広辞苑』には解説本文の中に「計り」、「斗り」とも書くとありましたが、今回調べられた範囲の漢和辞典では意味の違いは見つけられませんでした…。
そこで、今回は国語辞典で多く採用されている「許り」の表記を使いました。
・「考えて」…実はこれも深掘りします!漢字研究者の白川静さんによる漢和辞典『字通』には、「かんがえる」は「考」以外に、「案・察・校」の三つが小学生の漢字で見られました。『字通』によれば、「察」は「かんがえてあきらかにする」、「校」は「くらべてかんがえる」といった意味が含まれるとのことでした。「案」は「かんがえる」について明確な意味の線引きの記載が見られなかったのですが、個人的に「案」には「つくえ」という意味から「机に向かってかんがえる」ニュアンスではないかと解釈しました。
今回の文章ではお金のことだけを「かんがえる」といった文脈で、お金と他の必要なものを「くらべ」ているかもしれないし、お金の使い道を「机の上でかんがえている」かもしれません。
そこで、漢字を一つにしぼるよりも複数の解釈ができる漢字が良いと判断して、常用漢字として読み方がある「考」を選びました。
・「知り」…実はこれも!(ラストの解説はややムズかしめかも)
国語辞典や漢和辞典を引くと、「知」以外に「識」が見られます。『新漢語林(第二版)』によれば、「識」の解字に、「識」の右側「戠(ショク)」は「織」の原字で「おる」の意とある。そこから「ことばを縦横に整え織り出して、物事を区別し、しる」の意味を表すとしている。今回のは言葉以外からのくる「しる」さびしさと判断したため、「識」ではなく「知」を選びました。
どうだったでしょうか。
上記の漢字表記こそ、私がこの文章に対して抱いた印象です。
私と違う解釈を持てたあなた!
どんな漢字をあてたか(それともあてなかったか)、一度辞書を片手に、あなたの読み方を誰かと話してみませんか。




















