◆個別指導の学習空間 新琴似教室・あいの里教室の関根です◆
私の最も好きな映画監督は、山田洋次監督です。
山田監督は「男はつらいよ」等の数多くの作品を監督していますが、そのほとんどの脚本がご自身で書かれています。
山田監督の描く物語はどれも素敵なものばかりです。
今回は数多い山田作品の中から、「わが街」という作品をご紹介します。
ご存知の方は少ないと思いますが、この作品は東芝日曜劇場というTBS系のテレビドラマの枠で放送された短編ドラマで、私も実際の映像は観たことがありません。
このシナリオを小説の形に書き下した本を読んだことがあり、とても感動しました。
「小樽の街は富岡町のカトリック教会の鐘の音で朝を迎える。
鳴海冬吉、すなわち私は、今朝も二日酔いの重い頭でベッドからヨロヨロと起き上がり、に向かった窓を開け放つ。」
という書き出しから物語がスタートします。
北海道、小樽。
この街をこよなく愛す初老の鳴海冬吉は女子大の英文学の教授であり、いつものように街はずれにある小さな喫茶店・リフィーで朝食をとっていました。
しかしこの日はいつもの穏やかな朝と少し様子が違い、この喫茶店を経営するおゆきさんは、ウエイトレスの春子の元気がないことが気になっていました。
訳を聞くと、洋菓子店に勤める春子の恋人・竜太が東京の有名洋菓子店からスカウトされ、すぐにでも小樽を出発しようとしていると。そこに春子もついて来てほしいと言っているのです。
希望に輝く竜太と、父や幼い弟妹を残して小樽を離れなくてはならないという思いに悩む春子。
おゆきさんは昔の自分と似た様な思いをしている春子を見て、鳴海教授に初めて自分のつらい思い出を話します…。
私がこのお話でとても印象に残っているのは、おゆきさんの過去を聞いた鳴海先生が言ったセリフです。
「後悔には二つの顔がある、とシェイクスピアは言っている。
一つは、やってしまったことへの後悔。
そしてもう一つは、やらなかったことへの後悔。
そう考えると後悔のない人生などないが、
試さなかった人生は試した人生より謙虚でなくてはならない。」
たしかこんなことが書いてあったと記憶しています。
物語の結末は、春子は様々なことが頭を駆け巡り竜太の待つ駅へ向かう足が止まってしまい、ついには辿り着くことが出来ませんでした。
哀しみに打ちひしがれた春子を、鳴海先生とおゆきさんは温かく迎えます。
しかし翌朝、喫茶店へ居るはずのない竜太がいつものようにケーキを持って現れました。
初めはみんな呆気に取られていましたが、春子は喫茶店を去る竜太のあとを追いかけ、寄り添う二人の姿を鳴海教授とおゆきさんは見つめていました。
そんな余韻も束の間、大学からの遣いがやってきて鳴海教授は講義へと急かされます。
雪に朝日が光って目が眩み、尻もちをつきます。
おゆきさんに淡い感情を抱いていた鳴海先生は、小番さんにお尻を押されて坂を上りながら想うのです。
「このままでいい…このままでいいんですよ、おゆきさん。」
素敵な話です。
私のつたない文章力ではこの良さの半分も伝えることは出来ませんが…。
何かを決断することはとても勇気がいります。
失敗を恐れずに挑戦することは格好良く見えて憧れるものですが、人生なかなかそう上手くいくものではありません。
山田監督はこの話で後悔のない人生は無いのだから挑戦することに価値がある、という事を伝えています。
その一方でこの物語の人物たちは希望を夢見ながらもそれを試すことが出来ませんでした。
しかしそうでありながらも、決して不幸せな結末になったわけではありません。
また試さなかった人生を責めたりもしていません。
鳴海先生は若い二人の姿に「Such is Life…人生またかくありなん」と言っています。
つらいことの多い人生にとても救いのある、優しい物語だと感動しました。
私も含め、すべての人に多くの幸せがあることを心から願います。
Such is Life…
Such is Lifeですよ。
それでは、また。
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