個別指導塾と家庭教師の学習空間、静岡エリア長泉教室のモチヅキです!
古典落語に「芝浜」という演目があります。
『酒ばかり飲んでいる男が芝浜で大金の入っている財布を拾う。
しかし拾ったはずの財布がなくなる。
妻は「財布を拾ったこと」は夢であったと言って男はようやく諦める。
男は改心して、懸命に働き、立ち直り、独立して自分の店を構えるまでに出世する。
後に妻から実は妻が財布を隠していたという事の真相を知らされるが
この真相を知った男は妻の背信を責めることはなく、道を踏外しそうになった自分を助け
真人間へと立直らせてくれた妻の機転に強く感謝する。』
という筋です。
この頃は、横領は死罪。妻の人情の機敏さが伝わる夫婦愛の噺です。
思えば私が大学受験生時代
模試でどんなに良い成績をとっても決して褒めてくれない教師がいました。
「この程度で満足するな。井の中の蛙になるな!」と。
大学に合格できた後も
「スタート地点にたっただけじゃないか!」
と浮かれている私を一喝しました。
今、思い返してみると、全て彼の言うとおりでした。
これも「人情の機微」でしょうか。
私が今この仕事をしていることを彼は知りません。
このことを彼に言おうものなら
「お前に務まるのか!」と叱られそうです。
彼に感謝の気持ちを表そうものなら
「そんなものいらんから自分の足元を見ろ!」
と照れ隠しをするでしょう。
かつて、とても世話になった先輩に「恩返しがしたいです。」と申し出たとき
こんなことを言われました。
「お前が本当に俺に感謝しているのなら、俺に恩返しなどいらないから、
お前の後輩にも同じことをしてやれ!」と。
この先輩の教えを守り、今度は私が、自分の後輩や生徒に
「人情の機微」を与えていきたいと思います。
さて、その後の芝浜の「オチ」が粋です。
妻は懸命に頑張ってきた夫の労をねぎらい、久し振りに酒でも、と勧める。
はじめは拒んだ夫だったが、やがておずおずと杯を手にする。
「うん、そうだな、じゃあ、呑むとするか」
しかし思いたった夫は、杯に口をつけることなくこれを置く。
「よそう。また夢になるといけねぇ」